日本は今、超高齢化社会です。
人生100年時代といわれるこのときに、どうせ100年生きるのであれば楽しく過ごしたいですよね?
そのためにはやはり健康であることが必須だと思います。
お金がたくさんあっても寝たきりで食事もできない状態じゃ意味ないですからね。
僕は人生をずっと健康で楽しく過ごすために必要なのは『歯』だと思っています。
もっと言うと歯だけでなくお口全体の健康ですね。
お口がきれいだと病気にもかかりにくく、ずっとおいしい食事がとれて人生のQOLが上がります。
旅行などに出かけても歯がなくておいしい食事が食べられなければどんなにいい景色を見ても楽しさ半減ですからね。
その中で今日は『口腔ケア』と『誤嚥性肺炎』について説明していきます。
長く生きてお口が弱ってくるほど誤嚥性肺炎のリスクは上がっていきます。
今日は誤嚥性肺炎とその予防について説明していきます。
日本における死因の構成割合
日本の死因で一番多いのは悪性新生物、いわゆる癌ですね。
誤嚥性肺炎は6位となっています。
割合は少なそうに見えますが毎年約4万人の方が亡くなっています。
そして、この人数は年々増加しています。
70歳以上の肺炎患者の7割以上が誤嚥性肺炎
上記の図のように肺炎患者は75歳以上で多く見られます。
そして、70歳以上の肺炎患者の7割以上が誤嚥性肺炎です。
年齢が上がるにつれて誤嚥性肺炎の割合が増えているのがわかります。
これは高齢になると摂食嚥下の機能が低下することや様々な疾全身疾患にかかりやすくなるためだと考えられます。
摂食嚥下については後で詳しく説明します。
高齢の方ほど誤嚥性肺炎に気をつけないといけないのね。
誤嚥性肺炎ってどんな病気なの?
通常お口から食べ物を食べると食道を通って胃に入ります。
この時、喉頭蓋というところが気管に蓋をして食べ物や唾液が入らないようになっています。
しかし、高齢になるとこの気管に蓋をする機能が低下して気管に唾液や食べ物が入りやすくなります。
お口の中にはたくさんのばい菌がいるため、これらも一緒に肺に入って感染することで誤嚥性肺炎になります。
正常な摂食嚥下のメカニズム
『食べる』ということの一連の流れを摂食嚥下といいます。
ここで正しい摂食嚥下のメカニズムについて説明します。
①:先行期(食べ物の確認)
まずは食べ物の確認です。
食べ物を見る、触る、においを嗅ぐなどでどのような食べ物なのかを過去の経験から判断します。
噛む必要があるのか、舌でつぶせるのか、飲み込むだけで大丈夫なのかなどです。
一度にお口に運ぶ量も決定します。
②:準備期(食べ物を口に入れて、咀嚼する)
食べ物をお口に入れるときに、まず口唇や前歯でちょうどよい大きさにします。
ここでも舌や口唇では食べ物の硬さや温度を感じてどのような食べ物か判断します。
舌で食べ物を歯の上に移動させて、顎と舌の協調運動によって細かく砕きます。
舌でつぶせるような柔らかい食べ物は口蓋と舌で押しつぶします。
この時、唇は閉じてしても鼻で呼吸することはできます。
鼻が詰まっていたり、鼻呼吸がうまくできない人は息ができずに食事が苦しくなって食べ物が口から出てしまいます。
口唇の力が弱くても食べこぼしをしてしまいます。
③:口腔期(食塊形成と嚥下開始)
食べ物を飲み込むことを嚥下といいます。
嚥下をするときに呼吸は止まっているのですがその時間は0.5秒ほどです。
食べ物が細かくなってそのままだと喉を通るときに最初と最後の食べ物で差ができてしまい0.5秒に間に合いません。
そのため、口腔期では嚥下しやすいように食べ物を一塊にします。
食べ物が一塊になると軟口蓋が持ち上がり鼻咽腔が閉鎖され、鼻に食べ物が入るのを防ぎます。
舌が口蓋に押しつけられながら食塊が喉の方に移動していきます。
④:咽頭期(食べ物が喉に送り込まれて食道へと移動する)
舌によって食べ物は喉(咽頭)に流れ込みます。
この時、食べ物が気管に入らないように喉頭蓋という部分が気管に蓋をします。
この時間が0.5秒となります。
喉頭蓋の動きが悪く気管にうまく蓋ができないと気管に食べ物が入ってしまいます。
こうして肺が感染してしまうと誤嚥性肺炎となります。
⑤:食道期(飲み込み完了)
食べ物が食道に入ると胃に移動していきます。
喉頭蓋が気管を開放して呼吸が再開されます。
これで飲み込みが完了です。
誤嚥性肺炎になりやすい人
- 高齢の方(75歳以上)
- 歯周病になっている方(お口の中が汚れている)
- お口が乾燥している方
- 免疫力が下がって感染しやすい方
- 脳梗塞、脳内出血の後遺症がある方
上記の方は誤嚥性肺炎のリスクが高いため注意が必要です。
誤嚥性肺炎は嚥下障害によって起こります。
嚥下障害の原因となる疾患が下のグラフになります。
脳梗塞と脳出血による後遺症で嚥下障害となる人が約6割を占めていることがわかります。
『むせないから大丈夫』は間違い!
正常であれば先ほど説明した摂食嚥下は無意識のうちに行われて誤嚥することはありません。
それには
- 嚥下反射:食べ物を飲み込むときに起こる反射
- 咳嗽反射:気管に入り込もうとする異物を押し出す反射←これがむせるということ
これら2つの反射が働いているからです。
高齢になるとこれらの反射が弱くなって誤嚥が起こります。
確かに、食事中によくむせるようになった、喉がゴロゴロ鳴っているなどは誤嚥が起こっている可能性のあるサインです。
しかし、むせなくても誤嚥することはあります。
むせずに誤嚥することを不顕性誤嚥といいます。
また、食べ物を食べていなくても起きているとき、寝ているときにも私たちは唾液を嚥下しています。
肺炎既往のある患者さんの70%は寝ている間に誤嚥をしているといわれています。
食事の時以外にも誤嚥が起こっている可能性があるので注意が必要です。
誤嚥性肺炎を引き起こすのは歯周病菌
肺炎の原因は、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌性肺炎、インフルエンザウイルスなどのウイルス性肺炎、マイコプラズマやクラミジアなどの非定型性肺炎があります。
普通の肺炎は肺炎球菌、インフルエンザウイルス、マイコプラズマなどが原因のことが多いのですが、
誤嚥性肺炎の原因はグラム陰性嫌気性菌という歯周病菌
です。
これは
- 歯にできた細菌の塊であるバイオフィルム
- 清掃不足でお口の中に残ったプラーク
- 入れ歯についたプラーク
が原因となります。
お口の中が汚れていると歯に細菌の塊であるバイオフィルムができます。
バイオフィルムは歯ブラシでは取ることができないのでほっておくとどんどん細菌の数が増えていきます。
そして、お口の中に細菌がたくさんいる状態で誤嚥が起きると肺に感染が起こり、誤嚥性肺炎になってしまうのです。
歯周病についてはこちらの記事を参考にしてください。
誤嚥性肺炎の予防には歯科医院での口腔ケア!
先ほど説明したばい菌の塊であるバイオフィルムは歯ブラシや薬では取り除くことはできません。
しっかりときれいにするためには歯科医院によるプロフェッショナルケアが必要になります。
研究データでも定期的に歯科医院でケアしている人と何もしていない人ではケアを受けている人の方が誤嚥性肺炎になるリスクが低いという結果が出ています。
歯周病は自覚症状が出た場合はかなり進行している危険があります。
誤嚥性肺炎だけでなく虫歯や歯周病で歯をなくさないためにも定期的に歯科医院で検診する習慣をつけましょう。
定期健診の重要性についてはこちら。
お口が弱ると体も弱ってくる
フレイルという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
フレイルとは
ヒトの老化の過程における「健常」と「要介護状態」の中間であり、健康障害につながる心身の脆弱な状態であると同時に、ストレスに対する予備力の低下に起因した状態である
引用:菊谷武 オーラルフレイルの診かた
と定義されています。
フレイル状態を放置していると身体機能が低下して要介護状態になってしまいます。
健常、フレイル、身体機能障害は可逆性ですが身体機能障害から健常に戻るのはとても難しくなってしまいます。
そこで重要となってくるのがオーラルフレイルです。
オーラルフレイルとはお口のフレイルのことをいいますが、これはフレイルの入り口といわれています。
口が乾燥する、むせるようになった、話をしていて聞き取りにくいといわれるようになった、などの症状がある場合はオーラルフレイルの可能性があります。
誤嚥性肺炎はお口が汚れて、嚥下機能が弱ってくることで起こります。
オーラルフレイルにいち早く気づき、早期に対応することが誤嚥性肺炎の予防や寝たきり生活にならないための対策になります。
オーラルフレイルについてはこちらを参考にしてください。
オーラルフレイルは口腔機能低下症という病名で治療は保険適応しています。
心当たりがある人はかかりつけの歯科医院で相談してみましょう。
まとめ
誤嚥性肺炎の仕組みや予防方法について説明しました。
誤嚥性肺炎のためでなくずっと健康でいたいのであればお口のケアはしっかりと行いましょう。
歯が悪くなることで食べ物が制限される→栄養状態が悪くなり元気がなくなる→活力がなくなり外出もしなくなる→体が弱っていく、といった負のループに陥ることがあるので注意してください。
私たちの体を維持するためには栄養のある食事が必須です。
食べ物をとるお口は大事にしようという意識が重要です。
お家での歯磨き、定期的な歯科検診を心がけましょう。
今日はこれでおしまいです。
お疲れ様でした!
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