歯周病の治療で通院してるけど、実際何しているかよくわかってないんだよね。
歯石を取るだけで何回もかかるのかな?
治療期間とかがわからないと不安になるよ。
歯周病の治療は重症度、お口の状態、生活環境によって変わってかます。今日は歯周病の治療の流れを説明しますね。
歯周病の治療の流れ
皆さんが歯科医院を訪れるときは
何かしらの理由がありますよね。
歯が痛い、詰め物がとれた、検診をしたい、など
このような患者さんが来院した一番の理由を主訴といいます。
基本的にはまず、この主訴を解決していきます。
下の図の①、②の部分になります。
検査
痛みなど気になるところがなくなったら
いよいよ歯周病の治療が始まります。
といってもいきなり歯石をとったりするのではなく
まずは検査をします。
検査の種類として
- 問診
- レントゲン
- 口腔内写真
- 歯周基本検査
- 細菌検査
などがあります。
いろいろな検査があるのね
問診
糖尿病などの全身疾患や
飲んでいるお薬、
アレルギーがあるかなどにつてのお話を聞きます。
歯周病はお口の中だけでなく
生活習慣なども関係してくるため
それらについても色々うかがいます。
レントゲン
お口全体、部分的なレントゲンをとります。
これが全体のレントゲンです。
パノラマエックス線撮影といいます。
これが部分的なレントゲンです。
デンタルエックス線撮影といいます。
それぞれのレントゲンでわかることと、わからないことがあるので
歯科医師の判断で両方撮影したり
どちらかだけ撮影したりします。
上記の2つは二次元の写真のため
もっと詳しく検査するために
このような三次元の写真がとれるCT撮影をすることもあります。
口腔内写真
お口の中の状態を記録するために
お口の中の写真をとります。
こんな感じの写真です。
初診のお口の状態の記録としてや
治療前と治療後で歯茎の状態はどう変化したかなど
患者さんのモチベーションアップにも使います。
歯周基本検査
お口の中を見ながら
- ポケット測定(プロービング)
- BOP
- 歯の動揺度
- PCR
などを調べていきます。
ポケット測定
歯と歯茎の間にプローブという器具を入れ
ポケットの底からの長さを測ります。
aをプロービングデプス
bをアタッチメントレベルといいます。
一般的な歯周ポケットはaの長さです。
アタッチメントレベルは歯の基準点を決めて長さを測ります。
これにより実際の歯周病の進行度や治療後の改善度がわかります。
ちなみにプロービングの力は約20gで測定します。
チクチクして痛い!という患者さんは多いです。
でもとても大事な検査です。
BOP
プロービング時に歯茎から出血している所を記録します。
歯茎からの出血をBOP(Bleeding On Probing)といいます。
これを記録することが大事なんです。
BOPは歯周病の活動状況を示します
たとえば
A:歯周ポケットが6mmで出血がない部位
B:歯周ポケットが4mmで出血がある部位
AとBを比べると
歯周病が進行している部位はAですが
今後歯周病が進行しやすい部位はBということになります。
BOPがある部位は今後、歯周病が進行しやすい状態にある
ということです。
これは歯周病菌が
血液中の鉄分をエサにして増殖していくからです。
歯磨きの時の出血も同じですので注意しましょう。
歯の動揺度
ピンセットで歯をつまんで検査します。
揺れ方によって4つに分類されます。
Miller(ミラー)の分類といいます。
0度:ほぼ揺れない 0.2mm以内の揺れ
1度:近遠心(歯が前後)に少し揺れる 0.2~1.0mm
2度:近遠心(歯が前後)に揺れる 1.0~2.0mm
頬舌(歯が左右)に揺れる
3度:近遠心、頬舌にかなり揺れる 2.0mm以上
歯を押すと上下に揺れる
歯は骨に歯根膜というクッション材を介して生えているので
正常であってもほんの少しは揺れます。
上記の分類で3度、つまり歯を押して上下に揺れていると
歯を抜かなければならない可能性が高いです。
PCR
PCR(プラークコントロールレコード)では
歯にどれくらいの汚れがついているか調べます。
歯を図のように4つに分けて全部の歯を測定します。
全体の20%以下が理想です。
細菌検査
歯周病の原因はお口のばい菌ですが
お口の中には300~700種類のばい菌が2000億、多い人で1兆も生息しています。
その中で歯周病菌に特に関係しているばい菌たちを
レッドコンプレックスといいます。
上記の図は、ばい菌の分布図で
最上層をレッドコンプレックスといい、最も歯周病原性が高いとされています。
特に歯周病原性が強いのがP.gingivalisⅡ型です。
お口の中にどのようなばい菌がどれくらいいるか調べることで
歯周病のリスク診断を行うことができます。
歯周基本治療
検査を行い、診断して、治療計画をたてて
患者さんに説明して同意を得られたら
いよいよ治療がスタートします。
主な治療方法は
- 口腔衛生指導
- ブラッシング指導
- スケーリングルートプレーニング
- 残せない歯の抜歯
- 歯に合ってない詰め物、被せ物のやり直し
となっています。
口腔衛生指導
歯についての知識や関心をどれだけ持っているか
お口の健康のために正しい行動をしているかを表す指標を
デンタルIQといいます。
まずは患者さんのデンタルIQの向上を目指します。
正しい知識を持っていても行動してなければ意味がないですし
行動していてもその行動が間違っていてはダメですよね。
これらが重要になります。
『歯医者に任せていればよい』
と思っている人もいるかもしれませんが
歯周病は日常生活のケアがすごく大切になります。
何より自分のことですので
任せきりではなくしっかりと理解をして
歯科医師と二人三脚で治療していきましょう!
歯周病についてはこちらの記事を見てください。
ブラッシンング指導
基本的な歯ブラシの持ち方、動かし方から
お口に合った磨き方を指導していきます。
歯磨きのやり方についてはこちらの記事を見てください。
スケーリングルートプレーニング
歯磨きがあまりできていないと
歯垢(プラーク)が歯にたまっていきます。
プラークはばい菌の塊です。
これが長時間放置されると
唾液中のカルシウムなどにより石灰化して歯石になります。
歯石は石のように固く、歯ブラシではとることができません。
また、歯石の表面はザラザラしているのでプラークがつきやすくなります。
ばい菌により歯周病が進行して
歯周ポケットが深くなるとそこにまた歯石がたまっていく、
という悪循環です。
歯にプラークがたまる
↓
歯石になる
↓
さらにプラークがたまる
↓
歯周病により歯周ポケットが深くなる
↓
深くなったところにも歯石がたまる
このように歯周病は進行していきます。
歯科医師、歯科衛生士はスケーラーという器具を使って歯石をとります。
歯茎の下の歯石をとるときは
痛みがないように麻酔をするときもあります。
歯茎より上の見えている部分の歯石は
1~2回ほどで除去できますが
歯茎より下の見えない部分の歯石は
見えないうえ歯茎より上の歯石より硬く、強固に歯に付着しているため
4~6回ほど治療回数かかります。
結構回数がかかるんだね。
残せない歯の抜歯
歯周病が進行しすぎてグラグラな歯や
虫歯が進行してボロボロになってしまった歯は
抜かなければなりません。
『抜きたくない!!』と思っている人がほとんどだと思いますが
残しておくことのデメリットがある場合があります。
ボロボロになってしまった歯は
ばい菌の住処になってしまいます。
治療ができないくらいボロボロになってしまうと
ばい菌を除去する方法が抜歯しかなくなってしまいます。
それでも残しておくと
歯の周りの骨がどんどん溶けてなくなってしまう可能性があります。
抜いた歯は二度と戻ってはきません。ベストな選択は何か歯科医師とよく相談しましょう。セカンドオピニオンという選択もあります。
歯に合っていない詰め物、被せ物のやり直し
こんなものや
こんなものですね。
歯に合っていない詰め物、被せ物は
プラークがその部位にたまりやすくなります。
さらにその部位は歯磨きもやりにくいので
歯周病が進行するリスクファクターとなるのです。
歯に合っていない詰め物、被せ物は
プラークがたまりやすく、ブラッシングもしにくいので
きれいにやり直す必要がある
再検査
治療が一通り終了したら
治療効果の確認のため
ポケット測定、レントゲンなどの再検査を行います。
治癒している場合はメンテナンスに進みますが
検査の結果によってはもう一度、歯周基本治療に戻ったり
次の歯周外科治療に進みます。
歯周外科治療
歯周基本治療のみで治らなかった場合は
歯周外科治療を行います。
歯周外科を行う目的は
- 器具の到達性を得る
- 肉芽組織(歯茎の中の炎症が起きている組織)の除去
- 治療回数、期間の短縮
などがあります。
歯周外科の種類はいくつかありますが
ここでは日々の臨床でよく使う
組織付着術といわれるフラップ手術を紹介します。
歯茎に隠れている歯石は
見えにくく、歯に強固にこびりついているので
見えるようにしてきれいにしよう!というのがフラップ手術です。
まず上図の1のように歯茎に切れ込みを入れます。
次に2:歯茎を開いて
3:肉芽組織(炎症が起きている組織)を取り除きます。
すると歯石が見えるようになるため、取り除いていきます。
歯石がきれいに除去できたら
開いた歯茎を元に戻して、縫合して終わりです。
見えるようにして歯石を取るため
歯周基本治療を何回も繰り返すより
治療回数、期間が短くなります。
無駄にやる必要はないですけどね。
再検査
同じように再検査を行い
治療の評価を行います。
歯周外科の内容によりますが治癒までには
3~6ヶ月ほどかかるため
経過観察をする期間が少し長くなります。
メンテナンス
検査によって歯周病の治癒が確認出来たら
メンテナンスに入っていきます。
歯周病は一度治療したら終わりではありません。
歯石などは時間がたつとまた歯にたまっていきます。
今まで磨けていたところが磨けていなかったり
虫歯になったり
被せ物が古くなって、かけたりするかもしれません。
せっかく治療したところが
また悪くなると
治療がはじめからやり直しになってしまいます。
そうならないようにメンテナンスでは
定期的な検査により歯周病が悪化していないか
口腔ケアに対するモチベーションが維持されているか
ブラッシングの確認
歯磨きではとりきれない汚れの除去
などを行っていきます。
メンテナンスの期間
どれくらいの間隔でメンテナンスしたほうがいいの?
これには人によって違いますが
3ヶ月に一度はメンテナンスに行きましょう。
もちろん重度の歯周病の人や、プラークコントロールが悪い人は
1~2ヶ月に一度の方がよいですし
歯周病のリスクが少ない人は(年齢が若く、プラークコントロールが良く、喫煙歴がないなど)
6~12ヶ月に一度でもよいでしょう。
ただ、これは目安ですので
期間については、歯科医師と相談して決めるのが一番です。
まとめ
歯周病の治療に終わりはありません。
ある程度の年齢になると
歯周病でない人の方が少ないです。
歯周病はサイレントキラーといわれ
静かに進行していきます。
しかし、ある一定のラインを超えると
ドミノ倒しのように歯が抜けていきます。
歯があるうちは気づかないかもしれませんが
自分の歯で食事がとれることは
すごく幸せなことなんです。
歯がなくなり入れ歯になると食事がしにくいため
食事がおいしく感じられなくなり
食事の量が減り
体力が落ちて
免疫力が落ちると
体の健康にまで影響してしまいます。
健康寿命を延ばすためにも
歯周病の治療はしっかりと行いましょう!
今日はこれで終わりです。
おつかれさまでした!
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