「歯茎が腫れて痛い!」
疲れているときや風邪を引いたときなどになる方も多いのではないでしょうか?
歯茎が腫れる理由はブラッシング不足や免疫力低下によって炎症が起きるためです。
細菌が原因ですのでしっかりとブラッシングをすれば数日で改善することがほとんどです。
しかし、歯茎が長期間腫れてしまうことがあります。
その場合は歯肉の線維性組織が増殖して腫れる「歯肉増殖症」の可能性があります。
今日は歯肉増殖症について解説していきます。
歯肉増殖症の分類
歯肉増殖は以下の3つに分類されます。
①:単純性歯肉増殖症
②:歯肉線維種症
③:薬物性歯肉増殖症
単純性歯肉増殖症
単純性歯肉増殖症は口呼吸などが原因で歯肉の線維性組織が増殖して発生します。
口呼吸についてはこの記事を参考にしてください。
歯肉線維種症
歯肉線維種症は炎症を伴わない歯肉の増殖です。
歯冠を覆うくらい肥大することもあります。
薬物性歯肉増殖症
薬物性歯肉増殖症は薬の副作用によって歯肉が増殖する疾患です。
上記の薬を服用している方は歯肉増殖のリスクがあります。
カルシウム拮抗薬は高血圧や狭心症の治療で使われます。
免疫抑制剤であるシクロスポリンは免疫を担当するリンパ球の働きを抑制する薬です。
臓器移植による拒絶反応の予防やベーチェット病、再生不良性貧血などに使われます。
上記3種類の中では抗てんかん薬であるフェニトインでの歯肉増殖が一番発生しやすく、服用患者の約50%に歯肉増殖が見られます。
ニフェジピンでは約25%、シクロスポリンでは約40%の患者さんに歯肉増殖が見られます。
重症度に服用薬剤の期間や量は関係ないと考えられていますが詳しいことはよくわかっていません。
歯肉増殖症の特徴
歯茎が肥大する
歯と歯の間の歯茎である歯冠乳頭部から歯冠中央に向けては歯肉が肥大します。
重症化すると歯を覆ってしまうくらい肥大してしまいます。
見た目やかみ合わせが悪くなり、食事がしにくくなったり話にくくなります。
歯周ポケットができる
歯肉が肥大するので歯と歯肉の間である歯周ポケットが大きくなります。
通常は3mmほどですが歯肉増殖症になると10mm以上の歯周ポケットになる場合があります。
歯周ポケットについてはこの記事を参考にしてください。
歯周ポケットが形成されるとその中に汚れがたまり、細菌が増殖します。
歯周病が悪化しやすくなり、口臭も発生します。
治療法
・口腔清掃の徹底
・歯肉切除
・服用薬剤の変更
まずはお口の清掃です
お家でのブラッシング、定期的な歯科院でのプロフェッショナルケアを行います。
これだけで増殖した歯肉が戻ることもあります。
歯肉増殖が重症の場合は肥大した歯肉によってブラッシングがやりにくくなってしまうため、増殖した歯肉を切除します。
薬の服用が原因の場合は医科と連携して変更できるなら変更します。
参考文献
カルシウム拮抗剤性歯肉増殖症の基礎と臨床 尾 﨑 幸 生,吉 村 篤 利
薬物性歯肉増殖症の発症機序を探る 米 田 栄 吉
薬物性歯肉増殖症の発症メカニズムを考える 米田 栄吉
原因薬物変更後に全顎的に著明な歯肉腫脹を呈した薬物性歯肉増殖症の1例
まとめ
歯肉増殖を起こす薬を服用している人はてんかんや循環器障害という疾患をもっています。
生命維持のために薬の変更ができない場合が多いです。
その場合、歯肉切除を行ってもまた後戻りしてくることもあります。
歯肉増殖のメカニズムはまだ詳しくわかっていないため、今後、歯肉増殖が起きない薬が開発されることに期待しましょう。
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでした!
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