『食育』という言葉が世の中にかなり浸透してきました。
皆さんも1度は聞いたことがあると思います。
食育と聞くと体の健康のためというイメージがありますよね。
日々の食事は体の健康にとても重要になってきます。
しかし、食育は体だけでなく食事をとるお口にとってもとても大切です。
特に成長が著しい子供の食事はお口の機能の獲得、発育、虫歯の予防などにも密接に関係してきます。
子供のときに正しくお口の機能を獲得して、しっかりと成長すると、虫歯や歯周病になりにくいお口になりずっと自分の歯でおいしく食事をとることができるようになります。
そして、それは健康寿命を延ばすことにつながります。
今日は『食育』をテーマにどのようにしてお口の機能を獲得し、成長していけばいいのかを説明していきます。
食育とは
日本では平成17年に「食育基本法」が制定されました。
食育とは、生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。
近年の生活習慣の変化により食に対する様々な問題が浮上しています。
- 栄養の偏りや不規則な食事による肥満
- 生活習慣病
- 過度なダイエットによる低栄養
- 高齢者の低栄養
人間は食事をしないと生きていけません。
つまり、「食べる力」=「生きる力」なのです。
食育によって育てられる「食べる力」とは
- 心と身体の健康を維持できる
- 食事の重要性や楽しさを理解する
- 食べ物を自分で選択し、食事づくりができる
- 家族や仲間と一緒に食べる楽しみを味わう
- 食べ物の生産過程を知り、感謝の気持ちをもつ
これらのことをいいます。
これらを子供の時から家庭や学校で学び、大人になっても実践して育み続けることが重要になります。
お口と食育
食事は当たり前ですが口から食べます。
つまり、お口がうまく機能していないときちんと食事をすることはできません。
食育にとって、お口はとても重要な位置にあります。
うまく成長できないと上記の図のような負のサイクルになってしまいます。
きちんと食事をとるためには子供のときにお口が成長して食べるなどの機能をしっかりと獲得する必要があります。
上記の図のようなよいサイクルになるためにもお口の成長、発育を考えなければいけません。
そして、お口の成長はお母さんのお腹の中から始まっています。
妊娠期→乳児期→幼児期→児童期→学童期→思春期→青年期と成長の時期に適したアプローチをすることが重要です。
子供のときにきちんとお口の成長、発育をすることができると、栄養面や楽しく食事をすることができようになり将来のQOL(クオリティオブライフ)が増加して健康寿命を延ばすことにつながります。
妊娠期の食育
赤ちゃんのお口やお顔の成長はお母さんのおなかのなかにいる妊娠期から影響があります。
妊娠期に注意すべきことは
- 体力、筋力はある程度必要
- 過度なダイエットで栄養不足にならないようにする
- 歯周病の治療をする
これらのことを気をつけなければいけません。
体力、筋力はある程度必要
最近は運動不足により筋力、体力が減少しています。
子宮を支える役割のある腹筋、背筋、骨盤底筋群の筋力低下により子宮を支えられない妊婦さんが増えています。
子宮を支えられないと、子宮が下がってしまい、赤ちゃんはおなかの狭いスペースで過ごすことになり、うまく成長できなくなってしまいます。
ウォーキングやヨガなど妊娠期でもできる運動をするように心がけ、できたら妊活中に筋力、体力をつけるようにしましょう。
過度なダイエットはNG
過度なダイエットによる低栄養も赤ちゃんに悪影響を与えます。
乳歯や数本の永久歯は妊娠期にはすでにつくられています。
お母さんが栄養不足だと弱い乳歯や永久歯になってしまい、将来虫歯になりやすくなってしまいます。
「体重が増えすぎないように産婦人科の先生にいわれた」
「つわりがきつくて食べられない」
など妊娠期は色々あると思いますが工夫してしっかりと栄養をとりましょう。
歯をつくるのに重要な栄養素はカルシウム、リン、タンパク質、ビタミンA、D、B1、B2、C、ニコチン酸、鉄、ヨウ素、マンガン、亜鉛、フッ素などです。
これらは歯をつくるためだけではなく、健康な体をつくる栄養素でもあります。
食事制限のある妊娠期ですが、バランスの良い食事を心がけてください。
歯周病の治療をする
妊娠中はホルモンバランスの影響で歯肉の炎症がおきやすくなります。
また、つわりのせいで歯ブラシを口の中に入れるのが気持ち悪く、歯を磨くことができない場合があります。
そして、歯周病は低出生体重児や早産のリスクを高めるという研究データがあります。
早産とは妊娠37週未満の出産で、低出生体重児とは出生体重が2500g以下のことをいいます。
低出生体重児の多くは早産で生まれた赤ちゃんですが妊娠期間は十分にもかかわらず体重が小さい赤ちゃんもいます。
低出生体重児の原因は35歳以上または17歳以下の母体、お酒、たばこ、高血圧、糖尿病、妊娠中のダイエットによる栄養不足や食べ過ぎによる体重増加などがあります。
歯周病菌が出すLPSやIL-1、TNF-αといったサイトカインによって免疫系統が変化して早産のリスクを高めると考えられています。
低出生体重児は不正咬合になりやすくなるため注意が必要です。
- 歯の生える時期が遅い
- 歯の生える順番が異なる
- 歯が弱い状態で生えてくることが多い(エナメル質形成不全)
- 歯がくっついて生えてくることが多い(癒合歯)
- 歯の数が足りないことがある
- 歯並びが悪くなる(V字歯列が多い)
- 高口蓋になりやすい
上記が低出生体重児の特徴になります。
低出生体重児や早産を予防することは、子供の将来の歯並びを予防することにもつながります。
お酒やたばこはもちろんですが
- バランスのよい食事をして体重が減りすぎたり、増えすぎたりしないようにする
- できれば妊活中に歯周病の治療をする
- 妊娠中も歯科検診でお口をきれいにしてもらう
これらのことにも気をつけましょう。
歯磨きのやり方や歯周病についてはこちらの記事を参考にしてください。
まとめ
「食事」というのは健康でいるためにはとても重要です。
体をつくり、健康でいるためには正しい「食」についての知識が必要です。
食育について学び、実践していかなければいけません。
きちんと食事をとるためにはお口の成長が必要不可欠ですが、これはお母さんのおなかにいる妊娠期から始まっています。
妊活中、妊娠期にもしっかりとバランスのよい食事を心がけましょう。
今回は妊娠期の食育について解説しました。
次回は乳児期からのお口を育てる食育について解説していきます。
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでいた!
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