お口の機能は「食べる」「話す」「呼吸する」です。
これらは歯並びやお口周りの筋肉、舌によって行うことができます。
筋肉や舌の使い方が悪いと正しくお口を機能させることができません。
お口周りの筋肉や舌の使い方を訓練することをMFTといいます。
MFTでお口を鍛えることで正しい機能が身に付き、将来の歯並びもよくなります。
今日はMFTについて解説していきます。
MFTって何?
MFT(Oral Myofunctional Therapy)は口腔筋機能療法といってお口周りの筋肉や口唇、舌を鍛えてバランスを整えることで、歯並びをよくしたり、お口の機能を発達させる訓練のことをいいます。
正しい歯並びは正しいお口の機能によってつくられます。
間違った機能だと悪い歯並びになってしまいます。
上図のように口唇の力と舌のバランスがよいときれいな歯並びになります。
しかし、舌の力が唇の力より強くバランスが悪いと、歯は前に倒れてしまい、出っ歯になってしますのです。
MFTを行うことでお口のバランスを整えることができ、正しい機能を身につけることで悪い歯並びを予防することができます。
MFTを行うメリット
- 呼吸、嚥下などの正しい機能が身につく
- 悪い歯並びを予防する
- 矯正治療の後戻りを防ぐ
お口の機能がうまくできないことを口腔機能発達不全症といいます。
これには「呼吸」「嚥下」「舌の位置」が正しくないことが原因です。
口腔機能発達不全についてはこの記事を参考にしてください。
上の3つがとても重要になります。
MFTもこの3つができるように行っていきます。
これらが歯並びや発育にどのように関係しているかは以下の記事で解説しています。
鼻で呼吸する鼻呼吸についてはアレルギーなどの鼻づまりでできない場合があるので、その場合は耳鼻咽喉科での治療を優先させましょう。
MFTってどうやるの?
MFTには様々な種類があります。
実際には歯科医院で精密検査を行い、どの機能を鍛える必要があるのか調べ、患者さんごとにMFTを行う計画を立てます。
舌の位置が間違っていれば舌の位置を覚えるトレーニング。
間違った嚥下をしていれば嚥下のトレーニングといった感じです。
今回はよく行うMFTについて紹介します。
スポットポジション
舌の正しい位置を覚える訓練です。
上図のように前歯の裏の膨らみに舌の先端がきます。
この位置をスポットといいます。
スポットの正しい位置を木の棒などで確認します。
そして、舌の先をスポットにつけて、舌全体を口蓋にくっつけるようにします。
はじめはトレーニングの時に位置を確認して、慣れてきたら常に舌の位置をこの位置に置くことを意識しましょう。
ポッピング
舌を持ち上げる力を鍛えるトレーニングです。
舌の先をスポットにつけて、口蓋に舌全体をくっつけます。
舌をくっつけたまま口を開いていき、舌小帯を伸ばします。
舌を離すときに「ポンッ」と音を出してください。
1日10~15回が目標です。
このトレーニングは音を出すことが目的ではありません。
舌がスポットに当たっているか、舌小帯はしっかり伸びているか確認しながら行ってください。
スラープスワロー
正しい飲み込み方を覚える訓練です。
鏡、スプレー、ストローを用意してください。
ストローは直径5mm以下の細くて柔らかいものがよいです。
まず、舌をスポットにつけ、舌全体を口蓋にくっつけてからストローを糸切り歯(犬歯)の奥に置いて噛みます。
ストローは舌の下にきます。
鏡を見ながら確認してください。
次に、口角の所からスプレーで水を口の中に入れます。
口唇を横に広げたまま音を出して水を吸って、舌の上に水を集めてから飲み込みましょう。
この時、口唇は開いたままにして閉じないようにしてください。
水を飲んだら鼻から息を吐いて1セットおしまいです。
左右交互に10~20回を目標にしましょう。
ポスチャー
常に舌を口蓋にくっつけておく習慣をつけるトレーニングです。
上記で紹介したスラープスワローの後に行います。
舌は口蓋につけたままストローを犬歯の奥で噛んでください。
今回は口唇は閉じます。
この状態で5~10分そのままでいましょう。
ボタンプル
口唇やお口周りの筋肉を鍛えるトレーニングです。
直径2.5㎝ほどの薄いボタンに30~40cmほどのタコ糸やデンタルフロスを結びつけます。
ボタンを唇と歯の間に入れて唇を閉じます。
糸をボタンが口から出ないように引っ張ります。
頑張ってボタンが口から出ないようにしましょう。
引っ張る、緩めるを繰り返して10回ほど行ってください。
この他にあいうべ体操やベロ回し体操もおすすめです。
MFTを行う年齢
嚥下や舌の位置、正しい呼吸法はできるだけ年齢が若いときに身につけた方がよいです。
顔の大きさは6歳ごろまでに80~90%発育します。
間違った機能のまま成長してしまうと顔も正しく成長することはできません。
また、間違った機能の期間が長いほど修正が難しくなります。
機能の改善は早ければ早いほど良いです。
こちらの記事も参考にしてください。
しかし、MFTは子供の理解と親の協力が必要不可欠です。
1歳の子供に「ストローを噛んで!」と言っても無理に決まっています。
よって、4~5歳でMFTを行うのが良いと思います。
4歳を過ぎると子供もなぜそれをやるのか、やるとどうなるのかが理解できるようになります。
ただ、発達も個人差があるので子供の理解度や協力度を考慮しながらMFTを始める年齢を決めていくのがよいでしょう。
まとめ
MFTについて解説しました。
家でやるトレーニングですが、どの訓練が必要かは歯科医院での検査によって決めます。
MFTは矯正治療と平行して行うことが多いので自由診療になります。
間違ったやり方をしても意味はないので歯科医師、歯科衛生士の指示のもと行うのが確実です。
MFTのみで歯並びを短期的に改善することは難しいですが、舌の位置、口唇の力、正しい飲み込み方は改善することができます。
正しい機能を身につけることで将来、歯並びが悪くなることを予防することができます。
子供の歯並びは見た目だけにいきがちですが、「機能」にも目をむけてみてください。
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでした!
参考文献
小児における口腔筋機能療法(MFT)の訓練効果について
はじめる・深めるMFT―お口の筋トレ実践ガイド 大野粛英 山口秀晴
MFTアップデート 大野粛英 山口秀晴
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