歯科治療をしていると「顎が外れた」という患者さんがときどきいます。
顎が外れて急患でこられたり、治療中に外れてしまう方もいます。
頻繁におこることではないですが、高齢の方や顎が外れやすい方は注意が必要です。
今日はなぜ顎が外れてしまうのか、外れたときはどうしたらよいのかについて解説していきます。
顎が外れてしまった!
顎が外れてしまったことを顎関節脱臼といいます。
正常な場合、下顎窩というくぼみに下顎頭という下顎の出っ張りの骨が収まっています。
関節円板(下図の黄色い部分)というクッション材を介して顎は動いています。
下顎窩の前方のでっぱりを関節隆起といって、下顎頭がこのでっぱりを超えてしまうと顎が外れてしまいます。
顎関節脱臼の分類
顎関節脱臼には三種類あります。
- 新鮮例:脱臼が起こってから時間がたっていないことをいいます
- 陳旧性:脱臼が起きて3~4週間以上たった状態です
- 習慣性:日常生活の口の開閉で簡単に脱臼することをいいます
新鮮例は痛みを伴うことが多く、陳旧性、習慣性は痛みを伴うことが少ないです。
習慣性では脳血管疾患や精神疾患の患者さんでみられる不随意運動(本人の意思とは関係なく起こる異常な運動)が関係することもあります。
その他に脱臼する方向や片側か両側の脱臼かで分類されます。
顎関節脱臼の症状
- 口を閉じることができない
- 食事ができない
- うまく話せない
- 唾が飲み込めず、よだれが垂れる
高齢の方や認知症の方は何も症状を訴えない場合があるので注意が必要です。
顎関節は左右両側にあり、両側性の脱臼が起きると下顎が前に出て受け口のような見た目になります。
片側性では下顎がずれて左右非対称の顔つきになります。
脱臼した側の耳の前を触ると凹んでいるのがわかります。
医療機関ではレントゲンを撮って診断します。
そのときに骨折がないかも調べます。
顎関節脱臼の治療法
顎関節脱臼の治療法は、外れてしまった顎を元に戻す整復と、脱臼した後はまた脱臼しやすいので再脱臼を防止する再脱臼防止法です。
治らない場合は専門の医療機関で手術を行う場合もあります。
医療機関では整復はヒポクラテス法がよく行われます。
術者は患者の正面に立って、指をガーゼで保護して親指を下顎の歯の上にのせます。
下顎を支えながら下顎を矢印のように下げて、後ろに押し込むように口を閉じてもらいます。
もとに戻った後もしばらくはまた脱臼しやすいので数週間から数か月は下記のことに注意しましょう。
再発防止のために顎に包帯をまくこともあります。
顎が外れたら、まずはかかりつけ歯科医院に相談を!
顎が外れてしまったら、まずはかかりつけの歯科医院に相談しましょう。
そこで顎関節の整復を行います。
もとに戻らない場合は口腔外科などの専門の医療機関に紹介してでの治療になります。
まとめ
顎関節脱臼はすぐに気づいて治療ができればいいですが、高齢の方や認知症の方で症状の訴えがない場合は陳旧性となり、整復が困難になることがあります。
ご家族の方やホームヘルパー、看護師、介護士などのまわりの方が気づいてあげることが重要です。
何か変だな?ということがあればまずはかかりつけ歯科医院で相談しましょう。
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでした!
参考文献
下アゴがはずれたら? -顎関節脱臼の Q&A―
口腔外科相談室 日本口腔外科学会
顎関節脱臼の対処法 依田 哲也
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