「どうして友達の○○くんは大人の歯がもう生えているのにうちの子はまだ生えないの?」
「保育園のお友達より歯が生えそろうのが遅い・・・」
このようなことを心配している親御さんは多いと思います。
実際の診療でもよく聞かれる質問です。
結論から言えば、生え変わりは個人差があるので基本的には心配しなくても大丈夫です。しかし、何かしらの処置が必要な場合もあるので自己判断せず、歯科医院で相談しましょう。
今日は、生え変わりの順番の平均や注意した方がよい生え変わりについて説明していきます。
乳歯の萌出
乳歯の名称
乳歯は上顎に10本、下顎に10本の合計20本生えてきます。
前歯から、乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯といいます。
歯科医院では乳中切歯から順番にA、B、C、D、Eと呼んでいます。
萌出時期
歯の種類 | 男(平均年齢) | 女(平均年齢) | |
上顎 | A | 10ヶ月 | 10ヶ月 |
B | 11ヶ月 | 11ヶ月 | |
C | 1歳6ヶ月 | 1歳6ヶ月 | |
D | 1歳4ヶ月 | 1歳4ヶ月 | |
E | 2歳5ヶ月 | 2歳6ヶ月 | |
下顎 | A | 8ヶ月 | 9ヶ月 |
B | 1歳 | 1歳 | |
C | 1歳7ヶ月 | 1歳7ヶ月 | |
D | 1歳5ヶ月 | 1歳5ヶ月 | |
E | 2歳3ヶ月 | 2歳3ヶ月 |
はじめに下顎の乳中切歯が生えてきます。
女の子の方が少し遅いですが男女とほぼ変わりません。
3歳くらいまでにすべての乳歯が生えて、かみ合わせが完成します。
永久歯の萌出
永久歯の名称
永久歯は上顎に14本、下顎に14本の合計28本生えてきます。(親知らずを入れて32本)
前歯から、中切歯、側切歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯といいます。
歯科医院では中切歯から1、2、3,4,5,6,7,8と呼んでいます。
乳歯から永久歯への生え変わり
永久歯は乳歯の下で顎の骨の中に埋まっています。
乳歯の根っこを吸収しながら永久歯は少しずつ生えてきて、乳歯がグラグラになるほど根っこを吸収すると乳歯が抜けて永久歯が生えてきます。
萌出時期
歯の種類 | 男(平均年齢) | 女(平均年齢) | |
上顎 | 1 | 7歳3ヶ月 | 7歳 |
2 | 8歳5ヶ月 | 8歳 | |
3 | 10歳10ヶ月 | 10歳2ヶ月 | |
4 | 10歳 | 9歳4ヶ月 | |
5 | 11歳1ヶ月 | 10歳7ヶ月 | |
6 | 6歳8ヶ月 | 6歳7ヶ月 | |
7 | 13歳3ヶ月 | 12歳9ヶ月 | |
8 | 17歳4ヶ月 | 17歳8ヶ月 | |
下顎 | 1 | 6歳3ヶ月 | 6歳1ヶ月 |
2 | 7歳3ヶ月 | 7歳 | |
3 | 10歳2ヶ月 | 9歳3ヶ月 | |
4 | 10歳2ヶ月 | 9歳7ヶ月 | |
5 | 11歳4ヶ月 | 10歳9ヶ月 | |
6 | 6歳5ヶ月 | 6歳2ヶ月 | |
7 | 12歳5ヶ月 | 11歳8ヶ月 | |
8 | 17歳3ヶ月 | 17歳5ヶ月 |
下顎の中切歯か第一大臼歯が6歳ごろに生えてきます。
9~12歳ごろで側方歯群といわれる乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯が生え変わります。
12~13歳ごろに第二大臼歯が生えてきて、15歳ごろに親知らず以外の歯のかみ合わせが完成します。
乳歯の間に隙間があるけど大丈夫?
霊長空隙、発育空隙という隙間です。ないよりもむしろあった方がよいです。
乳歯の間は隙間があった方がよいです。
後から生えてくる永久歯は乳歯より大きいので歯が並ぶスペース分隙間があります。
これを霊長空隙、発育空隙といいます。
上図の矢印の隙間のことです。
このような隙間がなくきつきつで乳歯が生えている場合、永久歯が生えてくるときにガタガタで生えてくる可能性が高くなります。
今の子供は顎が小さい子が多いので乳歯の間に隙間がない子は多いです。
顎の大きさは遺伝もありますが日々の生活習慣でも変わってきます。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
お友達より歯が生えるのが遅い!そのままでいいの?
乳歯では1~4ヶ月、永久歯では1年ほど生えてくる時期に差ががあります。
先ほど説明した萌出時期からこれぐらいの誤差は問題はありません。
しかし、以下のようなときは注意がひつようです。
- 乳歯が残っているのに永久歯が生えてきた
- 癒合歯がある
- 外傷で歯を強く打ったことがある
- 乳歯の虫歯で神経をとったことがある
- 左右の歯で萌出時期の差が6ヶ月~1年近くある
乳歯が残っているのに永久歯が生えてきた
乳歯が残っているのに下から永久歯が見えてきているときは要注意です。
永久歯は乳歯の根っこを吸収して生えてきますが、この吸収がうまくいかずに乳歯の根っこが残ってしまうときがあります。
すると乳歯の横から永久歯が出てきます。
この状態がずっと続くと歯並びに影響がある場合があります。
この場合は歯科医院で残ってしまった乳歯を抜いてもらいましょう。
癒合歯がある
癒合歯とは歯と歯がくっついてしまっている状態のことをいいます。
下顎の乳歯に多く、1~5%の割合でみられます。
永久歯にはほとんど発生しません。
検診などで指摘されるケースが多いです。
癒合歯があると
- かみ合わせに問題が生じることがある
- 虫歯になりやすい
- 永久歯の数が少ないときがある(40~50%)
- 永久歯の生え変わりがうまくいかないことがある
このような問題があります。
癒合歯はそれほど珍しいものではなく、緊急な処置は必要ないですが、歯科医院でレントゲンをとり経過観察が必要になります。
かかりつけの歯科医院で相談しましょう。
外傷で歯を強く打ったことがある
子供にケガはつきものです。
しかし、歯を強く打ってしまった場合は注意が必要です。
歯に強い力が加わると歯の神経が死んできてしまうことがあります。
すると根っこの先に膿がたまってしまい、永久歯が生えてこれなかったり、永久歯がうまく成長できなくなることがあります。
この場合は乳歯の神経の処置が必要になります。
神経の処置についてはこちらの記事を読んでみてください。
乳歯の虫歯で神経をとったことがある
先ほど説明した外傷と同じ理由です。
虫歯で乳歯の神経が死んでしまい、根っこの先が膿んでしまうと治療が必要になります。
左右の歯で萌出時期の差が6ヶ月~1年近くある
歯の萌出には個人差があるので他人と比べることはあまり意味がありません。
しかし、自分の歯の左右で差があるときは注意が必要です。
- 腫瘍がある(歯牙腫など)
- 余分な歯がある(過剰歯)
- 他の歯に引っかかっている
- 原因はわからないが正常に生えてこない
これらはレントゲンなどの診査をしないとわかりません。
ほっておいても生えてこないため何かしらの治療が必要になります。
かかりつけの歯科医院で相談しましょう。
永久歯が乳歯より黄色い!大丈夫?
大丈夫です。永久歯は乳歯より黄色っぽく見えます。
上図のように永久歯は黄色っぽく、乳歯は白っぽく見えます。
上図は歯の断面図になります。
歯の象牙質は黄色っぽい色をしています。
永久歯のエナメル質は半透明で下の象牙質の色が透けて見えます。
そのため、永久歯は黄色っぽく見えるのです。
乳歯のエナメル質は半透明ではないため、象牙質の色が透けにくく、白っぽく見えます。
白い乳歯の隣に黄色い永久歯があるので余計目立ってしまうんですね。
まとめ
乳歯から永久歯への生え変わりは問題がなければ順番に生え変わっていきます。
しかし、虫歯や外傷、過剰歯、腫瘍など生え変わりの障害になる問題は多くあります。
ほっておくと永久歯の歯並びに悪影響をおこします。
自己判断をせず、歯科医院で相談して、定期的に検診に行きましょう。
生え変わりだけでなく、虫歯や歯並びなどもチェックできます。
子供のころに虫歯が多いと将来虫歯になりやすくなります。
歯並びも悪いと将来の歯の寿命が短くなります。
乳歯でいつか生え変わるからと楽観視せずに、将来のためにも子供のときから口腔ケアに気を使いましょう。
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでした!
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