私たちのお顔の骨には副鼻腔という空洞があります。
副鼻腔は篩骨洞、前頭洞、上顎洞、蝶形骨洞の4つで、目の間やおでこの奥、頬に左右対となって8つあります。
この中で上顎洞は歯の根っこと近いため歯が原因で上顎洞に異常が起こることがあります。
今日は上顎洞に炎症が起きる上顎洞炎について解説していきます。
上顎洞炎って何?
お顔の骨の中にある副鼻腔は自然孔というところで鼻とつながっています。
副鼻腔の粘膜に炎症が起きることを副鼻腔炎といいますが、炎症によって自然孔が塞がってしまうと鼻づまりなど様々な症状がでます。
その中で上顎洞に炎症が起きることを上顎洞炎といいます。
副鼻腔炎の中でも上顎洞炎は歯科領域と大きく関係しています。
原因
上顎洞に炎症が起きる原因は大きく分けて2つあります。
歯が原因のものと鼻が原因のものです。
鼻が原因の場合は細菌やウイルス、カビなどが上顎洞の粘膜に直接感染したり、鼻風邪を引いて起きた鼻の粘膜の炎症が上顎洞に広がって起こります。
歯が原因の場合は歯が虫歯や歯周病、抜歯、インプラントオペが原因で上顎洞の粘膜に炎症が起きます。
上記はCT画像の冠状断面図です。
奥歯は根っこが上顎洞と近い、又は突出している割合が高くなります。
虫歯で神経に炎症が起きると歯の炎症が上顎洞の粘膜にも広がります。
この場合は歯の治療をしない限り治ることはありません。
歯の種類 | 割合(%) |
犬歯 | 4 |
第一小臼歯 | 4 |
第二小臼歯 | 8 |
第一大臼歯 | |
口蓋根 | 24 |
頬側根 | 8 |
第二大臼歯 | |
口蓋根 | 12 |
頬側根 | 8 |
上表は上顎洞に歯の根っこが突出している割合を示しています。
第一大臼歯が一番高く、第二大臼歯が続きます。
奥歯ほど歯の根っこは上顎洞に突出している割合が高いので、奥歯の虫歯や歯周病ほど上顎洞炎を起こしやすくなります。
症状
上顎洞は自然孔という交通路を介して鼻とつながっています。
上顎洞の粘膜に炎症が起きると自然孔が塞がって上顎洞の分泌物を排出することができなくなり、膿が溜まります。
いわゆる蓄膿症というものです。
- 鼻水
- 鼻づまり
- 嗅覚障害
- 膿が混ざった鼻水
- 歯が痛む
- 階段を上り下りして頭が揺れると痛む
上顎洞は左右で2つあるので、歯が原因の場合は片方、鼻が原因の場合は両方に症状が出やすいです。
上顎洞に膿が溜まって頭を激しく動かすと膿が動いて痛むときがあります。
歯が原因のときも鼻が原因のときも歯が痛む場合があります。
当たり前ですが歯が原因でないのに歯の治療をしても治りません。
逆に鼻が原因なのに歯の治療をしても治りません。
鼻が原因の場合は耳鼻咽喉科、歯が原因の場合は歯科、上顎洞炎が長期間続いて慢性化すると耳鼻咽喉科、歯科の両方から治療する場合があります。
そのため、医科と歯科がしっかりと連携する必要があります。
治療
まずは鼻が原因なのか歯が原因なのか調べる必要があります。
歯の可能性がある場合はまず歯から治療します。
最近の歯科医院ではCT撮影できるところが増えていますので正確に診断することができるようになっています。
上記はCT画像の冠状断面図ですが、上顎洞は正常だと空気のみが写るので黒い画像になります。
上顎洞炎になっていて膿が溜まると白い画像になるのでよくわかります。
虫歯や歯周病になっている歯が原因で上顎洞に膿が溜まっている場合は歯の治療(根管治療や抜歯)を行います。
根管治療についてはこの記事を参考にしてください。
急性症状がある場合は抗菌薬の投与も行います。
歯が原因でなかったり歯の治療を行っても治癒しない場合は耳鼻咽喉科での治療になります。
基本的には抗生物質による治療になることが多いですが、慢性化して長期間炎症が続いており、症状が改善しない場合は手術をすることもあります。
上顎洞炎は医科歯科連携が大切!
先ほど言ったように上顎洞炎には鼻が原因の場合と歯が原因の場合があります。
炎症が起きている原因をしっかりと診断して治療することが大切です。
歯を治療しても症状が改善しない場合は耳鼻咽喉科での治療が必要になる場合もあります。
歯科、耳鼻咽喉科が密に連携することで患者さんにとってベストな治療ができます。
そして、医科歯科連携は耳鼻咽喉科だけではありません。
糖尿病と歯周病は関連性があるので内科との連携。
歯周病が早産と関連しているので産婦人科。
歯周病が心臓病を悪化させるという研究もあるので循環器内科。
医科歯科が密に連携することで患者さんの健康を守ることができます。
まとめ
上顎洞炎は長期間慢性化した状態が続くと手術が必要になるケースもあります。
鼻づまりといった症状は寝不足や集中力の低下がおきてQOLが低下します。
早期の治療が必要です。
最近鼻水や鼻づまりの症状があり、歯科医院に通院しておらず虫歯や歯周病がそのままになっている人は上顎洞炎の可能性があります。
歯科、耳鼻咽喉科で相談してみましょう!
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでした!
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