【CAMBRAから学ぶ】虫歯予防

虫歯

CAMBRAとはCAries Management By Risk Assessmentの略でカルフォルニア大学サンフランシスコ校歯学部長であるJhon D.B. Featherstoneが提唱するリスク分類に基づく虫歯の管理方法です。

全米の歯科大学65校のうち40校が採用しています。

18000人以上を対象にした臨床研究を行い、しっかりとした妥当性があります。

1人1人虫歯のリスクを分析してその人のリスクにあった予防の方法で治療を行います。

CAMBRAは歯科医院で行う予防システムですので実際に行うためにはCAMBRAを導入している歯科医院に行くしかありません。(自費診療になります。)

今日はそのCAMBRAを参考にしてどのような人が虫歯のリスクが高く、どのように予防していけばいいのかを説明していきます。

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虫歯とは歯に穴があく病気

そもそも虫歯って何?

虫歯とはお口の中のばい菌によって歯に穴があいてしまうことをいいます。

つまり、虫歯は細菌感染によるものです。

お口の中にはたくさんのばい菌がいますがその中の

  • S.mutans
  • S.sobrinus
  • 乳酸桿菌

などが関係しています。

これらのばい菌が歯の表面で糖質から酸を産生します。

酸によって歯は少しずつ溶けていきます。これを脱灰といいます。

少しの脱灰でしたら唾液の力で元に戻りますが(再石灰化)そのまま進行すると穴があいてしまいます。

これが虫歯のでき方です。

虫歯が進行していくとどうなるかはこちら。

虫歯の原因

先ほど虫歯は細菌による感染症といいましたが、ばい菌だけでは虫歯にはなりません。

複数の要因が関係して虫歯は進行していきます。

  • 歯の質
  • 糖質
  • 細菌
  • 時間
虫歯の原因

歯の質は防御因子となり虫歯になることを防ぎます。

糖質、ばい菌、時間はリスク因子となり虫歯を進行させます。

歯の質も悪ければリスク因子となります。

防御因子とリスク因子のバランスが崩れて、リスク因子の方に傾くと虫歯になってしまうのです。

防御因子

防御因子とは虫歯になりにくくするものです。

  • フッ素
  • キシリトール
  • 唾液
  • クロルヘキシジン
  • 定期的な歯科検診

フッ素

フッ素は歯をフルオロアパタイトというものにして強化して虫歯になりにくくします。

歯の再石灰化を促進し、細菌の活動を抑制する働きもあります。

歯磨き粉などで家で塗るものと歯科医院で塗るものがあります。

詳しくはこちら。

キシリトール

キシリトールを食べると歯も強化され、さらにばい菌にも作用して酸の量を少なくさせ、お口の中が虫歯になりにくい環境になります。

ガムやタブレットタイプがあります。

詳しくはこちら。

唾液が多い

唾液は歯を再石灰化させることができ、汚れも洗い流してくれるので量が多いほど虫歯になりにくくなります。

酸性に傾いて虫歯になりやすいお口を中性に戻す緩衝作用があります。

クロルヘキシジン

クロルヘキシジン配合のマウスウォッシュを使うと虫歯菌を減らすことができますが、日本ではクロルヘキシジンの濃度が低いものしかないため、補助として使用します。

水25~50mlにコンクールF5~10滴を入れて、お口に含み数回ゆすいでください。

1日2回ほど行います。

定期的な歯科検診

そして、定期的な歯科検診が重要です。

お家の歯磨きでは汚れを完全にきれいにすることはできません。

磨き残しが多いところを指摘してもらったり、歯石となってこびりついた汚れもとることができます。

高濃度のフッ素を塗ることもできます。

このように防御因子を取り入れることで虫歯になりにくい環境をつくります。

リスク因子

リスク因子とは虫歯を進行させる要因となるものです。

  • ばい菌
  • お口の汚れ(プラーク)
  • 唾液が少ない
  • 間食が多い
  • 歯周病で歯茎が下がっている
  • 矯正器具がついている
  • 溝の深い歯

ばい菌、プラーク

歯についた汚れはばい菌の塊ですので酸を産生して歯を溶かします。

歯を磨かない、うまく磨けていない人は虫歯のリスクが高くなります。

唾液が少ない

先ほど唾液は虫歯の防御因子になるといいましたが量が少なくなると逆にリスク因子になります。

そして、唾液はリスク因子の中でもとても重要です。

唾液が少なくなると虫歯のリスクはかなり高くなります。

唾液が減る原因は薬の副作用、口呼吸、ストレスなど様々です。

詳しくはこちら。

間食が多い

虫歯の原因に『時間』が関係しています。

お口の中は基本的にはぼ中性(pH6.8~7)になっています。

脱灰と再石灰化

しかし、食事やジュースなどを飲むとお口の中は約5分ほどで酸性になります。

エナメル質がpH5.5(象牙質がpH6.1)より酸性になると歯は溶けはじめます。

唾液の力でお口の中は約40分ほどで中性に戻りますが、間食が多いとまたすぐにお口の中が酸性になってしまいます。

脱灰と再石灰化

間食が多いことでお口の中が酸性である時間が長くなり、虫歯になりやすくなります。

歯周病で歯茎が下がっている

歯周病によって歯茎が下がると歯の根っこが見えるようになります。

この根っこの部分は頭の部分と比べて酸に溶けやすいため虫歯になりやすいです。

さらに根っこの部分は磨きにくく、うまく歯ブラシがあたらないため汚れが残りやすくなります。

そして虫歯のリスクが上がっていく悪循環になります。

矯正器具がついている

矯正治療をする子供

矯正器具がついているとどうしても汚れがつきやすく、歯ブラシもやりにくいためどうしても虫歯のリスクは高くなります。

定期的に歯科医院で掃除をしてもらい、フッ素塗布などをしていった方がよいです。

歯の溝が深い

大人の歯が生えたばかりの子供に多いのですが溝が深い歯は虫歯のリスクが高くなります。

溝に汚れがつまりやすく歯ブラシが届きにくくなるためです。

この場合はシーラントといって溝に詰め物をして中に汚れが入らないようにします。

シーラント

お口に虫歯があるのは家が火事になっているのと同じ

先ほど虫歯はリスク因子と防御因子のバランスが崩れたときに発生するといいましたが、虫歯のリスクを評価する時にはもう一つの指標を考えます。

それが、疾患指標です。

疾患指標とは

  • 虫歯がある
  • ホワイトスポットがある
  • 3年以内に虫歯の治療をしたことがある

これらがあるかどうかです。

ホワイトスポットとは歯の表面の白濁です。

ホワイトスポット

CAMBRAでは虫歯のリスクをロー、ミドル、ハイ、エクストリームと分けるのですが、この疾患指標が一つでもある人は虫歯のリスクレベルが一番高いエクストリームリスクに分類されます。

お口に虫歯があるということは家が火事になっているようなものです。

家が火事になると火が燃えうつって大きくなっていきますよね?

虫歯も同じで一つ虫歯になると他にも虫歯になりやすくなります。

ここで大事なのがただ虫歯の治療をすればよいということではない、ということです。

火事になったとき、本棚が燃えてしまったからといって修理してもまた燃えてしまいます。

まずは火を消さなくてはいけません。

虫歯の場合も虫歯をまず治すのではなく、お口の中の火を消す、つまり、虫歯になりやすくなっているお口の状況を改善することが重要になります。

歯の質が悪ければ強化し、汚れがついていればきれいにして、間食が多ければ減らす、という虫歯になりやすい状況を改善してからはじめて虫歯の治療をして効果が出るのです。

ほとんどの人が虫歯になったら治療して終わっていますが、本当に大事なのは虫歯の治療ではなく虫歯になりにくいお口にする予防なのです。

虫歯のリスク評価

虫歯のリスクは疾患因子、リスク因子、防御因子のバランスによって決まります。

天秤が疾患因子とリスク因子の方に傾けば虫歯のリスクが高くなり、防御因子の方に傾けばリスクが低くなります。

疾患因子
☑ 虫歯がある
☑ ホワイトスポットがある
☑ 3年以内に虫歯の治療をした

上記に1つでもチェックがついた人は虫歯のリスクは高くなります。

1度虫歯になったお口はまた虫歯になりやすいからです。

リスク因子
☑ 歯をあまり磨かず、汚れがたまっている
☑ 間食が1日3回以上ある
☑ 溝が深い歯がある
☑ 口が乾燥している
☑ 唾液の量が減る要因がある(放射線治療歴がある、薬をたくさん飲んでいる、全身心疾患があるなど)
☑ 歯茎がさがって歯の根っこが見えている
☑ 矯正器具がついている

上記のチェックが多いほど虫歯のリスクが高くなります。

防御因子
☑ フッ素入りの歯磨き粉を使っている
☑ 歯科医院で定期的にフッ素塗布をしてもらっている
☑ キシリトールのガム、タブレットを食べている
☑ 唾液の量が多い

上記にチェックが多いほど虫歯になりにくくなります。

防御因子を増やして歯を強化し、お口を虫歯になりにくい環境にすることが大切です。

虫歯の予防法

虫歯を効率的に予防するためには上記で説明したリスク因子を減らして、防御因子を増やすことです。

以下の方法を試してみてください。

  • 歯科医院での定期的な検診、フッ素塗布
  • 溝が深い歯があれば歯科医院でシーラントを行う
  • フッ素入り歯磨き粉を使う
  • MIペーストを使う
  • キシリトールガムを食べる
  • クロルヘキシジン配合のマウスウォッシュを使う
  • 間食を減らす
  • ドライマウスを改善する

すべて長期の臨床研究を行って、効果が確認されている方法です。

MIペーストとはカルシウムやリンといったミネラルやお口の緩衝作用(酸性に傾いたのを中性に戻す)のあるCPP-ACPが配合されたペーストです。

リカルデントというと聞いたことがあるかもしれません。

歯磨き後に歯に塗るだけです。

塗った後は30分は口をゆすがないようにしましょう。

牛乳成分が入っているので牛乳アレルギーの方は使用できません。

まとめ

虫歯は治療を永遠に繰り返すことはできません。

4回ほど治療をすると歯はほとんどなくなってしまいます。

治療ももちろん大事ですが、最も重要なのは虫歯にならないように予防することです。

そのためには意識を変えなければいけません。

ほとんどの方は痛みがないと歯科医院に行きませんが、定期的に行くようにしましょう。

一生の医療費も痛いときだけ歯科医院に行く人と定期的に通院している人では定期的に通院している人の方が安くなります。

歯もきれいになって医療費も安くなるなら行った方がいいですよね?

歯がなくなってしまうとご飯がうまく食べられなくなります。

想像以上に噛めなくなり、ご飯を食べることが楽しくなくなってしまいます。

「おいしいものを自分の歯で食べる」ってすごくしあわせなことなんですよ。

今回はCAMBRAを参考にして虫歯のリスク評価、予防の方法をお話しましたが、このシステムは実際は歯科医院で行います。

患者さん1人1人のリスクを評価して予防の計画をたてます。

すべての歯科医院でできるものではないのでネットでCAMBRAを導入している歯科医院を探して話を聞いてみてください。

エビデンスのあるすばらしいシステムです。

一生自分の歯で食事ができるようにがんばって予防をしましょう!

今日はこれでおしまいです。

おつかれさまでした!

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