【歯医者が教える!】子供を成長させる『食育』について<乳児期~幼児期の食育①>

小児歯科

前回は乳児期の哺乳について説明しました。

5ヶ月を過ぎると哺乳だけでなく離乳食が始まります。

この離乳食の食べ方、与え方、食べる姿勢、タイミングなどがお口の発育に大きく関係してきます。

離乳食で子供は初めて『食べ物』と出会います。

反射や空腹といった『生きる』ための哺乳から『楽しむ』ためにも『食べる』ことになります。

もちろん生きるためにも食べるのですが楽しく食べることで豊かな感情が育っていきます。

親子のコミュニケーションのため、成長のため、感情を育てるため、そして、今後ずっと自分の歯で食べることができるように離乳食について学んでいきましょう!

『食育』をテーマにお口を育てる離乳食のタイミングや卒乳のタイミングについて説明していきます。

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離乳食の始める時期

離乳食を始める時期は一般的に

5~6ヶ月

といわれています。

これはこの時期くらいに赤ちゃんが離乳食を始めることができるところまで発達していることが多いからになります。

  • 食べる意欲がある
  • よだれがいっぱいでる
  • 首がしっかりすわって寝返りができる
  • 手で支えてあげると座ることができる
  • おもちゃなどを手でつかんで口に持っていく(協調運動ができる)

上記が離乳食を始めるサインになります。

すべてができていないと離乳食をスタートしてはいけないというわけではありません。

赤ちゃんも食べたいときと食べたくないときがあります。

完璧にやろうとしないで時にはお休みをはさみながら少しずつ進めていきましょう。

食べる意欲がある

「おなかがすいた!」「おいしそう!」

私たちが食事をとりたいと思う理由は赤ちゃんも同じです。

おなかがすいていなかったり、食事が楽しくなさそうだったら食べたいと思わないのは当然です。

離乳食を始める前からお母さんやお父さんが楽しそうに食事をしている様子を見せてあげましょう。

それを見た赤ちゃんが興味をもってじっと見たり、よだれを出していたら『自分も食べたい!』というサインです。

食事は栄養をとるためだけに行うのではありません。

親子のコミュニケーションや楽しいことと認識させることで豊かな感情が育ちます。

体幹が維持できる

食べたいという心理的発達も重要ですが食べるためには体の発達も重要です。

首がすわる、寝返りができる、手で支えればおすわりができるといったある程度赤ちゃん自身が体を支えることができるというのが離乳食を始めるサインになります。

足は体を支え、体は頭や手を動かす支えになります。

お口から食べるという動作をするためにはある程度体幹が維持できる必要があるのです。

噛む、飲み込むといった食事はきちんとした姿勢で行う必要があります。

そうでないとうまく噛めなかったり飲み込むことができないのです。

それを続けていると間違った癖がついてしまいます。

すると適切なお口の成長ができません。

離乳食を始める前から寝返りやおすわりの練習をして体幹を鍛えましょう。

協調運動ができる

食事をするためには『手でもつ』『口に運ぶ』といった1つの動作を連動させる動きをする協調運動ができることも重要です。

身体の動きとお口の動きがスムーズに連動することで食事ができるようになります。

手や口唇と舌、頬などと協調運動がうまくできないと将来的に

食べ物をこぼす

口から出てしまう

頬を咬んでしまう

うまく飲み込めない

といった不調和が生まれます。

この時期の赤ちゃんは色々なものに興味を示します。

音や匂い、日の光や風、おもちゃなど色々なものを見て、感じて、触れさせてあげてあげてください。

気になる方向に動いていこうとしたり、気になるものに触って、つかんで口に入れるということを繰り返すことで協調運動ができるようになっていきます。

2歳までが自己組織化を身につける大事な時期

自己組織化とは物質や個体が、系全体を俯瞰する能力を持たないのに関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果として、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のことである

引用:Wikipedia

難しくて何を言っているかわからないですよね(笑)

『食事』で説明をします。

『見る』『手でつかむ』『口に運ぶ』『噛む』『舌で食べ物を運ぶ』『飲み込む』といった1つ1つの動作がすべてできることで『食事』することができます。

この動作も脳からの指令が神経から筋肉に伝わって動きます。

これらの1つ1つの動作が意識しなくてもスムーズにできることが『食事』ということに対しての自己組織化です。

人の脳は2歳くらいにまでによく使う神経は発達してよく使わない神経は発達しなかったり廃棄されるという選別が大脳皮質というところで行われます。

大脳皮質は協調運動も制御しているので、2歳までに食べることに必要な動きを適切に繰り返すことで自己組織化されていきます。

食べることに必要な動きが適切に自己組織化されることで、正しい噛み方や口唇の使い方、飲み込み方が身につきます。

食事の力がお口に伝わり、発育することできれいな口元や歯並びになることができるため、この時期にしっかりと正しい食べ方を学びましょう。

卒乳の時期

卒乳の時期は

1歳~1歳半

の間に自然にやめることができるのが理想です。

赤ちゃんは飲みたいだけ飲んでおなかがいっぱいになったらやめるようにプログラムされているので哺乳は規則的ではなく赤ちゃんが欲しいときに欲しがるだけあげましょう。

逆に食べ物は規則正しくあげることが重要です。

時間や回数を決めて空腹のときに離乳食をあげて満腹になれば、哺乳の回数や量は減っていきます。

その流れで自然に卒乳できるのが理想です。

1歳半以降の授乳は幼児嚥下から成人嚥下の移行を阻害したり、虫歯のリスクが高くなるため、この時までには卒乳しましょう。

乳児嚥下と成人嚥下

哺乳時期の乳児と成人の嚥下は少し違います。

乳児嚥下成人嚥下
口唇開いている閉じている
かみ合わせかみ合っていないかみ合っている
吸啜、咀嚼時の舌の動き前方にあって乳首を押す食べ物を舌中央に集めて奥に送る
嚥下時の舌の動き前後運動舌を口蓋に押しつける

上記が乳児嚥下と成人嚥下の違いになります。

成人嚥下は舌を口蓋に押しつけます。

この舌の力によって上顎が発育します。

  • 正しい嚥下
  • 舌の力

この2つが上顎の発育にとても重要になってきます。

歯は通常、上の歯が下の歯を覆っています。

上顎が成長することで下顎がそれにつられて成長していきます。

上顎が成長しないと下顎を押さえつけてしまい、適切に成長できなくなってしまうのです。

歯は舌と口唇の力のバランスによって並びます。

幼児嚥下は舌を前後に動かし、口唇は開いているので舌が歯を押して歯並びが悪くなりやすいのです。

卒乳が長引くと幼児嚥下がのこりやすくなります。

先ほど説明した2歳までの自己組織化が幼児嚥下で定着してしまうためです。

2歳をすぎると修正することが難しくなるため、卒乳を適切な時期に行い、うまく成人嚥下への切り替えができるようにしましょう。

卒乳は1歳~1歳半までに完了しましょう。2歳を過ぎても幼児嚥下の場合は小児歯科で相談してみてください。

まとめ

今日は離乳食、卒乳の時期と『食事』をするのに必要な発達、なぜそれを2歳までに定着させないといけないかを説明しました。

乳児期~幼児期の子供は本当に色々なことを吸収して、急激に成長していきます。

そして、この時期に身につけた機能は今後もずっと使い続けます。

正しい機能を使うことできれいなお口、歯並びになることができるのです。

次回は離乳食の与え方について説明していきます。

今日はこれでおしまいです。

おつかれさまでした!

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