「歯が痛い!」
皆さん一度は経験したことがあると思います。
皆さんがその時行く病院は歯科医院であることがほとんどです。
そして、そのほとんどの痛みは歯科医院で解決することができます。
しかし、痛いのは歯でも原因が歯以外にあることがあります。
その場合は、歯科医院で「異常はないですね。」と言われてしまいます。
今日は歯が痛いのに原因は他にある疾患について説明していきます。
痛みの種類
痛みの種類は次の3つに大きく分かれています。
- 侵害受容性疼痛
- 神経障害性疼痛
- 心因性疼痛
侵害受容性疼痛
多くの痛みはここに分類されます。
体をぶつけた時などに、その部位の痛みを感知するところ(侵害受容器)に刺激が加わると脊髄や脳に伝わって『痛い』と感じます。
これを侵害受容性疼痛といいます。
お口が原因の痛みの多くは侵害受容性疼痛です。
- 虫歯
- 歯髄炎
- 歯周病
- 入れ歯の痛み
- 腫瘍 など
神経障害性疼痛
末梢神経、脳や脊髄の中枢神経が損傷することで起こる痛みのことをいいます。
- ヘルニア
- 三叉神経痛
- 脳卒中後の痛み
- 糖尿病性神経障害
- 帯状疱疹 など
歯が痛くて歯科医院に行き、レントゲンなどの検査をしても異常が見つからなかったり、歯の治療をしてレントゲンや見た目は治っているのに痛みがある場合は神経障害性疼痛である可能性が高くなります。
また後で詳しく説明します。
心因性疼痛
体や神経に異常はないのに心理的原因によって痛みを感じることをいいます。
精神科や心療内科と連携して治療をしていきます。
このような痛みは単独で発生することもありますが、2つ、3つと複合して痛みが発生する場合があります。
原因不明の歯の痛み(非歯原性疼痛)
歯が原因の痛みを歯原性疼痛、歯以外が原因の痛みを非歯原性疼痛といいます。
原因が歯でなくても歯の痛みが発生し、歯の痛み全体の2.1~9%を占めるといわれています。
残念ながら年間680000本の歯が根管に原因がないのに根管治療をされているという報告もあります。
歯が原因でないので歯の治療をしても治ることはありません。
今からよくある非歯原性疼痛について説明していきます。
筋筋膜性疼痛による歯の痛み
お口周りの筋肉の痛みによって歯が痛く感じることがあります。(関連痛)
歯ぎしりや食いしばり、口を大きく開けるなどで筋肉に負担がかかることで痛みがでます。
負担がかかった筋肉を触ったりして刺激することで歯が痛いと感じます。
歯の痛みは疼くような鈍い痛みでストレスによって悪化することがあります。
①:側頭筋→上顎の歯
②:咬筋→上下顎奥歯、耳、顎関節
③:外側翼突筋→上顎洞、顎関節
④:顎二復筋→下顎前歯
⑤:胸鎖乳突筋→口腔内、前頭部
⑥:僧帽筋→下顎、側頭筋
上の表が筋肉の刺激によって関連痛が起きやすい部位になります。
三叉神経痛による歯の痛み
三叉神経は歯や顔の知覚に関係している神経で三叉神経が障害されることで痛みが発生します。(神経障害)
三叉神経痛の患者さんのほとんどは「歯が痛い」と感じて歯科医院を受診します。
特徴は
- 歯磨き、食事、水を飲む、顔を洗う、髭剃りなどで痛みがでる
- 鋭い電撃的な痛み
- 痛みは一瞬~数秒で終わる
- 季節によって痛みが変化する(2月、11月が多い)
- 50歳以上に多い
三叉神経の圧迫が原因であることが多く、薬物療法が第一選択で外科処置や神経ブロックをすることもあります。
一般的な歯科医院ではなく口腔外科で治療することが多いです。
帯状疱疹による歯の痛み
帯状疱疹はVZVというウイルス感染によるものです。
ウイルスが神経に潜んでいて、免疫力が下がると発症します。
帯状疱疹の発症時、発症後に神経障害によって歯に痛みがでます。(神経障害)
持続的な痛みが発生し、健康な歯にもかかわらず神経に炎症が起こったような激痛が起こることもあります。
神経が死んでしまい、根っこの治療が必要になることもあります。
帯状疱疹の特徴は水ぶくれが顔にできることですが、できないこともあります。
投薬によって治療します。
歯の治療後に起こる痛み
歯の治療、特に虫歯や根っこの治療、抜歯の後に多いです。
歯の中には歯髄といわれる神経があります。
虫歯になるとばい菌が根っこの中に入り、神経を攻撃します。
基本的には感染した神経とばい菌を取り除くことで症状は改善します。
しかし、まれに治癒しているのにもかかわらず(見た目やレントゲンに異常がない)、痛みが続いてしまうことがあります。(神経障害)
歯の神経は末梢神経で、脳からの中枢神経とつながっています。
歯の治療で神経が変化して、そこに刺激が加わると脳が『痛い』と感じるようになってしまうのです。
これは末梢神経だけでなく、中枢神経まで変化することもあります。
痛みが消えないので治療を繰り返しますが、一時的に改善するだけでまた痛みがでるようになります。
経過観察を続けて改善傾向がない場合は、ペインクリニックなどでの治療が必要になることがあります。
痛みがある神経にまで達した虫歯を放置していると神経の変化が起こりやすいという報告もあるので虫歯は放置せずにしっかりと治療しましょう!
神経血管性頭痛による歯の痛み
脳血管の炎症による頭痛を神経血管性頭痛といいます。
- 片頭痛(女性に多い)
- 群発性頭痛
- 持続性片側頭痛
- SUNCT/SUNA
- 持続性片側頭痛
上記の頭痛から歯の痛みを感じることがあります。(関連痛)
痛みは持続的、激痛、拍動性で痛みが全くない時期もあります。
上顎洞などの副鼻腔の疾患による歯の痛み
上顎洞などの副鼻腔に炎症が起こると上顎の歯の痛みが発生します。(関連痛)
副鼻腔とは鼻の周りにある空洞のことをいいます。
- 鼻づまりが治らない
- 嫌な臭いがする
- 粘り気のある黄色い鼻水がでる
- 頭を下げたりして動かすと痛みがでる
上記のような症状がでます。
副鼻腔の粘膜に炎症が起こることで発症します。
上顎洞炎には歯が原因のものと鼻が原因のものがあります。
上記は上顎洞のCT画像です。
奥歯の根っこの先と上顎洞は近接しているため、上顎洞炎によって歯が痛むことがあります。
逆に歯の根っこの先の膿によって上顎洞炎になることもあるのでどちらが原因かしっかりと診断する必要があります。
歯が原因なら歯科医院、鼻が原因なら耳鼻科で治療します。
心臓疾患による歯の痛み
狭心症や心筋梗塞からの関連痛で歯が痛むことがあります。(関連痛)
歯以外にも肩や腕、顎にも痛みがでることがあります。
心臓が原因で歯が痛い場合は、運動によって痛みが増加して、ニトログリセリンなどの投薬で痛みが減少します。
心理的原因による歯の痛み
うつ病などの精神疾患やストレスで歯の痛みがでることがあります。(器質的変化のない痛み)
ストレスフリーを心がけ、改善しない場合は精神科や心療内科での治療になります。
その他の歯が痛む原因
- 頸部の腫瘍
- 大動脈解離
- 心内膜炎
- 唾液腺機能不全
- 薬物の副作用
- 迷走神経反応
まとめ
歯が痛いのに原因は歯以外にある疾患について説明しました。
歯科以外の問題もあるので他科との連携が必要になってくるものもあります。
歯科医師の診断力が重要になってくるので、普段から検診に行って、信頼できるかかりつけ歯科医院を探しておきましょう。
検診に行っているとレントゲンなどを見比べて、以前からの違いを考慮して診断できるので、初めて行く歯科医院より診断が正確にしやすくなります。
歯から全身疾患が見つかることもあるので定期的に歯科医院で検診はしましょう!
今日はこれでおしまいです。
おつかれさまでした!
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